第111章 きっと
「・・・・・・」
体が痛くて、目を覚ました。
いつの間にか寝てしまったことに背徳感のようなものを覚えながら体を起こすと、時間を確認する為にスマホを手に取った。
「・・・2時か・・・」
真夜中に目を覚ましたことも追加でため息を吐くと、固まった体を解すように腕を上に伸ばして。
道具も出しっぱなしだ。
そういえば夕飯もお風呂もまだで。
だらしないことこの上ないな、と自分を責めながら立ち上がると、キッチンへと向かった。
コップを手に取り水を注ぎ込むと、それを胃に流し込んで目を覚ました。
「・・・・・・」
だらしが無くなってきているのは、零が居ないから、なんていうのは理由にならない。
そう自分に言い聞かせながら、先にシャワーを済ませようと脱衣所へと向かいかけた時。
「・・・!」
音が鳴るはずのない玄関ドアから、突然僅かな金属音が響いてきて。
体が咄嗟に、身構えた。
「・・・・・・」
真っ先に思い浮かんだ人物はいるけれど。
その彼は戻らないと言っていた上、当然この部屋の鍵を持っている。
が、今この扉の向こうにいる人物は。
鍵穴を弄るような。
そんな金属音を響かせている。
ということは、これは・・・。
「っ・・・」
泥棒・・・。
その文字が浮かんだ瞬間、無意識に近くにあったフライパンを手に取っていて。
藁にもすがる・・・と言うが、人間追い込まれると何でも良いから掴みたくなるのだな、と思い知りながら玄関へとゆっくり近付いた。
音は、まだしている。
けれど暫くそれを聞いている内に、何か違和感を覚えた。
「・・・?」
ピッキングの経験が、残念ながらあるからこそ分かるが・・・これはピッキングの音ではない。
響いてくる音が中を弄るような音ではなく、ドアノブと何かが外で擦れているような金属音だ。
その音に耳をすませていると、先程まで寝ていたハロくんが徐ろにやってきて。
彼は玄関前にちょこんと座っては、何故か尻尾をパタパタを振り始めた。