第111章 きっと
「・・・いるわよ」
「!」
聞いておいてなんだが、意外だと思った。
それは彼女にそういう人がいるということにではなく、正直に〝いる〟と答えてくれたことについてで。
「ど、どんな人・・・!?」
彼女のような人が、どんな人を好きになるのか。
純粋に気になった。
「・・・貴女、楽しんでない?」
「ま、まさか・・・」
無理に探ろうとは思っていないが、その興味は表に出過ぎてしまっていたかもしれない。
大人気なかった、と反省しながら前のめりになった体を元に戻し、落ち着きを取り戻した。
「・・・秘密よ」
残念ながらその時には答えを聞くことはできなかった。
けれど後日、その人はサッカー選手だということを聞くと同時に、もう1人の影を感じたのは、また別の日の話で。
「どうしてそんな事聞くのよ」
「・・・・・・」
勿論、興味本位で聞いた訳ではない。
この数ヶ月、零と暮らして気になっていたことがあったからで。
でもそれを、やはり8つも下の子に聞くのはおかしいだろうか、と今更悩み始めて。
「・・・パートナーのことで悩んでいるなら、私より工藤くんの方が良いと思うけど」
口篭る私を見てか、彼女はため息混じりにそう言って。
「な、悩んでいるという訳じゃ・・・」
零の話は出していないのに、そこを察することができる彼女はやはり年相応には見えなくて。
私より余程、人生経験がある女性に見えてしまう。
「・・・やっぱり、本当に結婚できないのは寂しいなって・・・」
だから、妙に相談したくなるのかも、しれないが。
つい、気になっていることを口にしてしまうと、彼女は私に顔を近付けながら、薄ら笑みを浮かべて。
「紙切れ1枚で交わす契約に、拘る必要は無いと思うけど」
私も、結婚に無理に拘っている訳ではない。
でもそこに安心感があると思うと・・・手を伸ばしたくなっただけで。