第111章 きっと
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それから数ヶ月が経った。
私は博士の元で手伝いという名の勉強をさせてもらいつつ、博士と一緒に住んでいる女性とも仲良くさせてもらっていた。
「・・・ところで、志保さんっていくつなの?」
昔はここに、灰原哀という女の子が住んでいたけど。
今はその子によく似た宮野志保という子が住んでいる。
勿論、同一人物だということは分かっているが、以前にも増して妙に緊張するのは、彼女が非常に大人っぽいからだろうか。
「あら、言わなかった?」
束の間の休憩時間、彼女はコーヒーの入ったカップに口をつけながら尋ね返してきて。
「こういう時は、いくつに見える?って聞くのが正しいのかしら」
「どう・・・でしょう・・・」
時々敬語を引き出されてしまうのも、きっと彼女の雰囲気がそうさせている。
一度、同じことを聞いたような気もするが、彼女の言葉は巧みで、時々本当かどうか分からなくなるから。
思い返しながら、私も同じくコーヒーカップに口をつけると、彼女は徐ろに口を開いて。
「・・・19よ」
一言、そう返事をしてくれた。
19歳・・・ということは、工藤くん達より1つ上か。
それなら、初めて会った頃は18歳だった、ということで。
知れば知る程、彼女については信じられないと思うことが多くなる。
そもそも、彼女について知っていることも少ないのだけれど。
「・・・あの、1つ聞いても良い?」
「なにかしら」
8つも下の女の子に恐る恐る質問するなんて。
なんだか自分が情けなくなってくる。
「哀ちゃんって・・・好きな人とかいるの?」
そんな中、カップをソーサーに戻しつつ彼女を見ながら尋ねると、何故か珍しく、僅かに動揺するような素振りを見せた。
「ど、どうしてそんなこと聞くのよ・・・っ」
「え・・・いや、純粋に気になって・・・」
これでは答えがYesだと言っている様なものだ。
でもそれは敢えて口にせず、彼女からの答えを静かに待った。