第110章 キスで※
「煽ったのは、ひなただからな・・・ッ」
「ち、が・・・ァああ・・・ッ!!」
煽ったつもりなんて、勿論無い。
無い、けど。
「・・・ッ」
互いに、煽りだと思っていないものが煽りになって。
無意識の内に、互いを追い詰めていく。
「れ、ぃ・・・れい、零・・・ッ!」
さっきよりも強く。
さっきよりも深く。
彼のモノが私のナカを何度も埋める度、意識も理性も、何もかもが削り取られていくようで。
「ひなた・・・っ」
そして、彼の呼ぶ声が合図のように。
徐々にではなく、一瞬で。
「い、あぁぁぁ・・・ッ!!!」
再び快楽に飲み込まれていった。
ーーー
「・・・・・・」
目を覚ました時、その部屋に彼はいなくて。
部屋から出る時は連絡を入れるように、と書かれたメモ用紙だけが残されていて。
きっと仕事に行ったのだろう。
彼の自由な時間なんて少ないのに。
変に無理をさせた上、勝手に寝落ちてしまった。
情けないやら申し訳ないやらで、小さくため息が出た。
「くぅん・・・」
「・・・おはよ、ハロくん」
そんな私を、心配そうな眼差しで彼が見つめてきて。
大丈夫だよと返事をしながら頭を撫でれば、気持ち良さそうに目を細めた。
「・・・・・・」
こういうメモ用紙を残したということは、ポアロではないのだろうな。
恐らく、すぐには戻れないような場所での仕事。
組織のことが片付いたからといって、彼らの仕事が減らない事に、世の中の汚さを思い知ってしまったようで。
「・・・よし」
そんな彼の、少しでも役に立てれば。
そう思ったから、この道を選んだ。
彼も頑張っているのだから、私も頑張らなければ、と。
両頬を自ら叩いて奮い立たせると、勢いよく立ち上がり、買い物に出てくる旨を零にメールで連絡を入れて。
今日もまた、如月ひなたとしての1日が・・・始まった。