第110章 キスで※
「ひなた・・・っ」
腰を下ろすな、と言いたいのだろうけど。
そんな言葉を待つこともなく。
「・・・ッ・・・!」
上げた腰を、再び下ろした。
・・・その瞬間、何かの記憶がフラッシュバックしてきて。
それが何の記憶なのか。
察するのに時間は対して必要としなかった。
「・・・・・・」
これは・・・ほんの数時間前の記憶だ。
彼の上に跨り、自ら服を脱いで。
そのまま寝落ちてしまった記憶。
できれば忘れたままでいたかった。
「・・・我慢させたの・・・思い、出しちゃった・・・」
でも思い出してしまったから。
思い出すことができたから。
今度は彼にお預けをさせる事がない。
そう思えば、思い出せて良かったとも、言えるかもしれない。
「・・・それは、何よりだ」
彼の声が僅かに震えているのは、私のせいで。
微妙な締め付けが彼を余計に苦しめているのも、分かっているから。
「・・・ッ!!」
今度は少しでも我慢させる時間を縮めようと、腰を上げては何度も彼のモノを飲み込みなおした。
「ひなた・・・っ」
やはり、自分で動けば弱い部分を避けてしまう為か、余裕が僅かに生まれる。
でも余裕があるということは、彼もそうなのだろうかと、不安も同時に生まれてきて。
「・・・気持ちよく、ない・・・?」
つい、正直に尋ねてしまった。
その瞬間、彼の目付きが一瞬変わった気がして。
ドキッと心臓が跳ねるのを感じていると、次の瞬間にはもう、私の体はベッドに押し付けられていた。
「・・・ひなたが傍にいて、1つになって、熱を確認して・・・」
・・・あまり見ることのできない。
余裕のない目だ。
「感じない訳が、ないだろ・・・っ」
「っい、あぁぁ・・・ッ!!」
体と同時に、その目が私の奥深くまで犯してくる。
「気持ち良すぎ、て・・・おかしくなる・・・っ」
私も、そうだけど。
彼も、同じなのか。