第110章 キスで※
力が、入らない。
ぐったりとした体は倦怠感が酷く、呼吸は体が反射的に行っているだけで。
重くなった瞼を上げられる力も無く、何かを掴んでいた手も、ベッドの上へポトリと落ちた。
「・・・大丈夫か」
彼のそんな問いかけに返事もできない。
意識は半分、手放しているも同じで。
「ひなた」
一度ナカから彼のモノが引き抜かれ、体がベッドに完全に下ろされた。
その瞬間の喪失感と背徳感は、酷く大きくて。
ベッドに体が落ちたことを感覚だけで感じ取ると、小さくか細い声で、彼の名前を呼んだ。
「・・・どうした」
私の呼びかけに、彼は顔を近付けて応えてくれて。
見えていた訳ではないが、声がすぐ側で聞こえたのを頼りに、そう感じた。
「れい・・・まだ・・・」
疲労感が強い。
でも、体で分かっている事が一つある。
彼がまだ、達していない。
それなのに私が完全に落ちてしまうことは許されない。
言うことの聞かない体に、どうにか鞭打って体を起こすと、彼がその体を咄嗟に支えてくれた。
「・・・少し疲れただろ」
そう言って、再び私をベッドに転がそうとしたから。
拒むように彼の腕を掴んで体を起こすと、その反動のまま、今度は私が彼を押し倒すように体を突いた。
「ひなた・・・っ」
その上へ跨って彼を見下ろしながら、呼吸を整えて。
頭はボーッとする上、体に力は入らないが、このままではダメだと思ってしまうから。
「ンん・・・ッ!!」
「ッ・・・」
今度は自ら。
彼のモノをズプッと埋め込んでいくと、あっという間に一番深くまで飲み込んだ。
「っ、ん・・・ぅ・・・ッ」
仰向けの状態と、座っている状態では、快楽の種類が少し違う。
自ら得ていくそれは、与えられるそれとは違い、少し・・・ほんの少しだけ、余裕が生まれる。
その僅かな余裕だけで、腰を少しだけ上げた。