第110章 キスで※
「・・・今更隠しても、遅いと思うが」
「いいの・・・っ」
分かっている。
もう幾度となく見られてきた。
さっき以上のものも、見せたと思う。
けど。
「・・・ッ・・・」
今、は。
それ以上に情けなさが、強い気がして。
見られれば、強まってしまう気がして。
だから彼の視界を奪ったまま、私は腰をゆっくりと下ろし始めた。
「ん・・・ぅ・・・っ」
質量が、快楽が。
全てが指とは桁違いで。
「・・・っ」
これは何度経験しても。
何度交わったとしても。
相手が彼であれば。
きっと、慣れることはないだろう。
「・・・ひなた」
ほんの少しずつ、ゆっくり私のナカへと埋めていく中で、彼はふと私の名前を呼んで。
小さく言葉にならない声で返事をすると、彼は手探りの状態で私の後頭部へと手を添わせた。
「キス、してくれないか」
彼も僅かに、息は荒いけれど。
「・・・・・・」
それでもまだ余裕がありそうな状態に、何故こうも違うのかと呆れに似た感情が生まれて。
私の方が幾分か優位なはずなのに、と上から彼の唇をも奪うように、自分の唇を重ね合わせた。
「ン・・・んぅ、ん・・・」
こじ開けるように舌を彼の口内へ滑り込ませると、一瞬戸惑いのようなものを彼から感じた。
その、やはり私が優位だったんだと思った一瞬の隙を、彼が見逃すはずが無くて。
「・・・っふ、ぅ・・・んんンぅ・・・ッ!!」
どうにか体を支えていた足のバランスを突然崩され、呆気なく腰は下まで一気に落とされた。
その間も彼の手は私の後頭部から離れることはなかったが、私が彼の目を覆っていた手は反動で外してしまって。
「・・・零・・・ッ」
ズルい、意地悪だ、と目で訴えるように彼を睨めば、この期に及んでも彼は、余裕そうな笑みを挑発的に私へ向けてきた。