第17章 侵入者
男性も女性も・・・見たことがあるような気がする。
そう思って男性についての資料を見ていると、そこには諸星大の名前が書いてあったことに、やっと気がついて。
「この人が・・・」
小さくポツリと呟いた。
本名は赤井秀一。そしてFBIの捜査官。
卓越した技術を持ったスナイパー。
組織のボスは「シルバーブレット」と呼ぶ。
どうやら今から五年前に組織に入り、三年間は組織に潜入していたが、FBIの仲間のミスによって組織を脱退。
二年後の現在、キールという人物の撃った弾丸によって死亡。死体は車ごと焼かれた。
耐火加工ズボンのポケットに突っ込んでいた右手が焼け残り、その指紋から赤井秀一本人の死体であることが判明。
組織潜入時のコードネームは、ライ。
きっとここまでの情報は沖矢さんも知っていたはず。なのにどうして教えてくれなかったんだろう。
その文句を含んだ眼差しを、運転中の沖矢さんへ向けた。
「どうかされました?」
「いえ、別に」
再びデジカメに視線を戻しながらそう答えた。きっと私に隠す理由が何かあるのだろうけど・・・私は残念ながら探偵ではない。そういうことを考え出すのは苦手で。
彼は・・・赤井秀一は、兄と会ったことがあるのだろうか。
ふとそんなことも考えて。
まさかこんな簡単に彼の情報が手に入るとは思わず、少し違和感すら感じた。
既視感の残る赤井秀一の写真を見つめるが、やはり思い出せない。
黒髪で長髪の男性。そして切れ長の、少し悪いとも言える目付き。
つい最近どこかで会ったことがあるような気がしたが、彼はもうこの世にいない。それは不可能なことだった。
・・・いや、透さんはミステリートレインで、彼に変装して関係者の周りを彷徨いたとも言っていた。
私がどこかで見たのは透さんの変装だったのかもしれない。そう思うとどこか納得はできた。
ハッキリ思い出せないが、透さんの変装であれば関係のないことかと思い、それ以上は深く考えることをやめた。