第17章 侵入者
カバンからピッキングツールを取り出し、施錠を試みる。趣味の機械弄りをするうちに、いつの間にかこういうことまで得意になってしまっていて。
すんなり開いてしまった鍵に少し罪悪感を感じながらも、部屋に入った。
とにかく今は時間がない。思い当たるところだけを重点的に見ることにした。
部屋の隅に置いてある戸棚の下の段。
ここはあまり開けたことがない。
物音を立てないように、ゆっくりとそこへ近付く。
その扉の鍵は付け替えられていなかった為、持っていた鍵で解錠した。扉を開き、詰まっているファイルを一つずつ取ってはパラパラとめくっていく。
それは殆ど見たことのない資料だったが、特に組織とは関係の無さそうなものばかりで。
やっぱりこんなところに置くはずないか・・・と、出したファイル達を仕舞おうとしたとき、その奥にファイルで隠すように置いてある資料の束を見つけた。
手を伸ばしてそれを引っ張り出す。
そこには何人かの顔写真と、その人物の経歴のようなものが書かれていて。
「・・・!」
めくっているうちに見つけた、自分の顔写真。
そして、細かく調べ上げられていた自分の生い立ち。
これは依頼主としての私を調べたものだろうか。それにしては細かく調べ過ぎな気もする。
やはり、組織の仕事として調べられたということか・・・。そう思いながら、資料一枚一枚をデジカメで撮影した。
写真を撮り終えると時間が無いことに気付き、慌てて出した資料を仕舞って施錠する。
事務所の出入口の鍵も念の為施錠し、逃げるようにその場から去った。
先程降りた場所へ戻ると同時に、どこからともなく沖矢さんの車が現れた。どこか別の場所に止めていたようだ。
「何か良いものでも見つかりましたか」
「・・・分かりません、なんせ10分しかありませんでしたから」
軽い息切れを起こしながら車に乗り込み、沖矢さんの言葉へ返事をした。
カバンに仕舞ったデジカメを取り出し、撮ってきた写真を軽く確認していく。
男性と女性それぞれ一枚、そして私の写真。
それについていた資料は複数枚あって。
わたし以外の写真を暫く見ていると、どこか既視感に襲われた。
この二人、どこかで・・・。