第110章 キスで※
さっきの事で冷静になったのか、いつもの様子に戻った彼は、一度キッチンの方へと姿を消して。
彼に渡されたタオルケットで体を包んでは、静かに彼が戻るのを待った。
「・・・本当にすまなかった」
「わ、私の方こそ・・・」
戻ってきた彼の手からマグカップに入ったホットミルクを受け取ると、そこから伝わる温かさに落ち着かされた。
「・・・何か、言っちゃった・・・?」
私も冷静になった為か、少しずつぼんやりと昨日の事を思い出してきて。
以前酔った時は、彼に嫌いだと何度も言ってしまった事もあり、今回も何か思ってもいない事を言っただろうかと、不安になって。
「言われる方がマシだったかもな」
・・・ということは、言ってはいないのか。
「何・・・しちゃった?」
聞くのは怖いが、聞かなければ進まない。
これからは安易に飲むことを控えようと肝に銘じ、タオルケットを引き寄せて肩を竦めながら尋ねた。
「・・・聞きたいか?」
「う・・・」
意地悪そうな笑みと共に、頬へと伸びてくる彼の手に、どこか追い込まれたような気分になって。
改めて問われたそれに、思わず尻込みしてしまった。
「因みに、僕が脱がした訳ではないからな」
「・・・!?」
落ち着かせようと口をつけかけたホットミルクは、唇に触れることもなく。
予想外の彼の言葉に肩を震わせ驚くと、バッと彼の方へと視線を向けた。
「わ、私が脱いだの・・・?」
「挑発的にな」
・・・そんな、まさか。
でも彼が言うのだから間違いはないはずで。
そして、その言葉でなんとなく。
彼がどうして怒っていたか。
・・・というよりは不機嫌だったのか。
その理由が分かった気がして。
我慢させたというのは、そういう事か。
「本当にごめん・・・」
流石にこれは、彼に悪いことをした。
良くない絡み方をしたことに猛省しつつ、眉間に皺を寄せて。