第110章 キスで※
「・・・っ、い・・・零・・・」
握られた手の力を込めながら、必死に色んなことを訴えた。
それでも彼は私の弱い部分から的確に逸れた部分を、意地悪に攻め続けた。
「・・・どこまで覚えている?」
脇腹のくすぐったい辺り。
以前彼は、そう感じる場所は性感帯だと言っていたけど。
今ならそれが痛い程分かる。
「ど、こ・・・」
そんな中、突然問われたそれに頭を回転させようとしてみるが。
「・・・分からな、い・・・っ」
答えなんて、何も出なくて。
とにかく冷静になりたいから、と首を振って止めてほしいと願ったが。
「・・・どれ程でひなたが酔うか、よく分かった」
勿論、それが通るはずも無い。
「ン・・・っ!」
首筋から耳の裏辺りを、キスを交えながら彼の舌が這ってくる。
ゾクゾクっとした感覚が体中から湧き上がり、自然と腰がもぞもぞと動いてしまって。
「や・・・、零・・・っ」
苦しい。
でも具体的に口にしたくはない。
「嫌か?」
それは彼もよく分かっているだろう。
「・・・っ、今のまま、は・・・いや・・・っ」
だからこう言えばきっと。
「どうしたい?」
私の口から聞き出そうとする。
いつも彼はそうだから。
「どうされたい・・・か?」
私の意志を、考えを。
私の、口から。
「・・・っ・・・」
彼が怒っていることに、間違いはないはずだ。
ただ、どうされたいか、と問われたから。
今、1番してほしいことを。
「キス・・・して、ほしい・・・」
口にするぐらいは許されるだろうか。
「・・・・・・」
彼の目を見ながら、希望だけ伝えてみたけれど。
ジッと見つめ返されるだけで、暫く反応は無かった。
数十秒後、彼は握っていた手をスルリと解くと、その手を額に当て項垂れるように頭を下げ。
「・・・敵わないな」
ため息と共に吐き出すように。
そう、ポツリと呟いた。