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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第109章 一から




「零はまだ仕事でしょ?」

頬から手を離せば、その感覚はまだ形を保ったままそこにあって。

痛みが取れるわけではないが、摘んでいた彼の頬を撫でると、そのままスッと体を離した。

「まだ顔出してないから、行ってくるね」

昨日の夜、彼には一応今日出かけることを伝えていた。

でもそれは風見さんではない、とある場所へ人を尋ねる、ということを。

だからさっきの出来事は余計に、後ろめたさがあった。

「ひなた!」

そろそろ時間だろうから、と駆け足で目的地へ向かいかけた時。

何故か名前を呼ばれ、反転させたばかりの体を振り返らせた。

「早めに帰る・・・っ」

と、同時に目が合って。
その彼は何ともいえない表情で。

真っ直ぐ私だけを見つめ、それだけ伝えた。

「・・・気を付けてね」

手を振りながら笑顔でそう返すと、彼も小さく手を振り返してくれた。

本当は、あの家に私が向かうことは嫌だったのではないかと思う。

それはそこにあまり良い思いが残って無いというのもあるが。

私が、あの人を。

「・・・・・・」

思い出すのが、嫌なんじゃないか、と思うから。

ーーー

目的の場所の前に立つと、一呼吸置いてからインターホンへと手を伸ばした。

ここも1年経っても殆ど変わらない。
相変わらず、蘭さんが手入れをしているのだろうか。

それとも、家主が帰ってきたのだろうか。

そんな事を思いながら、私は工藤邸のインターホンを鳴らした。

・・・が。

「・・・・・・」

返事は、無い。

もし彼が高校に戻っているのなら、そろそろ帰る頃かと思ったが。

そもそも、工藤新一に戻ったからといって、ここに住んでいるとは限らないのだけど。

「如月さん?」
「!」

そう少し不安になりかけた時。
背後から突然、聞きなれない声で名前を呼ばれた。

「コナ・・・」

振り返りその姿を確認すれば、まともにお礼もお別れの言葉も伝えることができなかった、とある少年の姿が重なる、制服姿の男子高校生の姿があった。



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