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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第109章 一から




「!」

かと思えば、突然私の手を離し、先程の風見さんのように勢いよく頭を下げた。

「・・・すまない」
「ま、待って・・・!」

慌てて辺りを見回し、人が居ないことを確認しながら彼の頭を上げるように肩に触れるが、その体は頑固にビクともしなくて。

「もう、ひなたがどこにも行かないと信じてはいるんだ」

突然、何かを言い出した彼の言葉に耳を傾けつつ、目を見開いてその姿を見つめた。

「でも、どこか不安が拭いきれない自分がいる」

何かが溢れたように。
頭を下げたままの彼は、淡々と、でも意を決した様子で言葉を続けた。

「それが・・・そんな自分が、許せないんだ」

数日前、彼が言いたかったのはこれだったのだろうか。

「ひなたを信じられない自分が・・・嫌なんだ」

だとしたら、彼を。

「・・・そんなことで、悩んでたの?」

そんなことで、悩ませていたのか。

「そんなことって・・・」

ようやく顔を上げた彼は、どこか戸惑いが滲んだ表情をしていて。

思っていた言葉と返ってきた言葉が、違ったのだろうか。
でも、それは。

「当たり前だよ」

そうとしか言えなかったから。

「そんな不安、拭えないのが当たり前で普通だよ」

払拭できないだろうとは思っていた。
それはこれからも同じことで。

「あんな大きなことしておいて、信じてって言う方が無理だし、図々しいよ」

強めの口調で零に言い返せば、零の表情が段々と情けなくなったから。

その頬を摘んでは軽く引っ張った。

「零はおかしくない」

更に強い口調で言いながら、もう一方の手で自分の頬を摘んで。

「もう居なくならないって約束はする。でも私のことは、ずっと疑ってて」

これは現実だと。

「信じないで」

零に与えた痛みは、私も背負っていくと。

「でも、零が好きだってことは」

そう、伝えるように。

「信じて」

酷く酷く、情けない笑顔で、そう言った。

「・・・勿論だ」

彼もそれに情けない笑顔で返すと、ようやく互いの時間が始まったように感じられた。




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