第109章 一から
「実は降谷さんにも、如月さんの事を相談されていまして・・・」
やはり、彼が相談するべき先は風見さんか。
その予想は当たっていたけれど。
「・・・私の、ですか?」
風見さんの様子から察するに、多分これ以上深い部分は聞けないだろうな。
「再開してから、ずっと元気が無い・・・と悩んでいるようでした」
「・・・・・・」
元気が無い、か。
どこか言葉を濁しているようにも聞こえるそれに、心の中で少しモヤが掛かった。
「そう・・・ですか」
彼には今の私がどう見えているのだろう。
実際、元気でなかった訳ではないが。
変に気を使えば、空回りするだけだろうし。
・・・どうするのが一番なのか。
ベンチの背もたれへ体を寄りかけながら視線を空へと向けて。
この雲が私の心を表しているようだと感じていると。
「あっ、すみません・・・電話・・・」
風見さんの胸ポケットから、微かにバイブ音が聞こえて。
慌ててそれを取り出す彼を横目で見ていると、スマホの画面を見た風見さんは一瞬、表情を強ばらせた。
「・・・・・・」
きっと、相手は零だ。
風見さんが私に背を向けながら電話にでる姿を見て、そう察した。
「今ですか?今は米花町の公園に・・・」
仕事の話だろうか。
今日も忙しかっただろうに、わざわざ時間を作ってくれた彼には頭が上がらない。
風見さんも、私の様子を見ておきたかったと言ってくれたが。
その優しさに、今回は甘えてしまった。
「誰と、ですか・・・?」
再び空に向いていた視線は、風見さんが向けた私への視線に引かれるように、そちらへ向いた。
どうやらここで誰と会っているのかと聞かれたのだろうけど。
「!!」
風見さんがそれに答えようとした瞬間、ベンチが僅かに揺れた。
それは私達が背を向けている方から、誰かが風見さんとの間の背もたれ部分に、軽く腰掛けたからで。
「それで、誰といるんだ?」
直前まで気配なんて無かったその腰掛けた人物は、僅かに不機嫌そうな声色で、背後から私達にそう尋ねた。