第109章 一から
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あれから2日程経った。
零はあの時から変わらず、時々視線を落としては静かになってしまうことがあって。
あの日、私に聞きたいことはあれだけではなかったのかもしれない。
そう思いつつも、彼が私に聞いてきたのはあれだけだったから。
言いたいことは言ってほしいとも言われたが、その前に、と。
「・・・降谷さんの様子、ですか」
「はい。いつも通りですか?」
まずは自分で、周りに探りを入れることにした。
それに一番適任だと感じたのは、風見さんで。
彼にこっそり連絡を取り、近くの公園で待ち合わせ後、二人でベンチに腰掛けては単刀直入に尋ねた。
「そう・・・ですね」
思い出すように、そしてそれが質問の答えとも取れるように。
風見さんは少し首を傾げ、顎に指を添えながら答えた。
「・・・少なくとも、以前よりはマシだと思いますよ」
彼の言う以前とは、きっと私が居なくなった一年程前の事を言っているのだろう。
確かにその頃の彼は、話を聞かなくとも荒んでいただろうと想像できる。
・・・全て、私のせいなのだけど。
「あ、あの・・・」
やはり、直接零から聞くしかないだろうかと考えていると、風見さんは言いづらそうな声色で、恐る恐る話を切り出して。
「降谷さんと、喧嘩でもされたんですか・・・?」
何故か風見さんの方が不安そうな表情をしながら、怯えるように尋ねてきたから。
思わず小さく、笑いを吹き出してしまった。
「違いますよ」
クスクスと笑いながら返事をすれば、風見さんの強ばった表情も僅かだが和らいで。
そもそも、彼が仕事に支障を出すとは思えない。
そうなれば、風見さんの前ではいつも通りなのは当たり前か、と今更なことに気付いて。
「どうしてそう思ったんですか?」
そんなに深刻そうに尋ねてしまっただろうかと思っていると、風見さんは地面と私に視線を何度か動かし、少し迷う様子を見せた後、再び口を開いた。