第108章 零まで※
「服・・・着てもいい?」
内心、動揺している。
本当は、聞きたくて仕方がない。
さっきまでの彼が、何を思っていたのか。
でも思い出させることも、したくなかったから。
「・・・あぁ」
いつも通りを装う私に彼も何も言わないまま、彼は私の上から退くと、互いに纏っていなかった衣服を身に付けた。
「・・・目、覚めちゃったね」
ベッドに腰掛ける私に背を向けたまま、彼はキッチンのある方に体を向けながら、入口付近に立っていて。
その背中に話しかけてみるが、返事はまたしても返ってこなかった。
「・・・・・・」
何と言うのが正解なのだろう。
何も言わないのが正解なのだろうか。
あの時、私が動かなければ彼の様子が変わることは無かったのだろうかと思うと、後悔が押し寄せた。
小さく、ため息を吐きながら床に視線を落としていると、ふと視界に白い何かが入ってきて。
何だろうと視線を動かせば、そこには私をキラキラとした丸い目で見つめる、ハロくんの姿があった。
「また起こしちゃったね」
ごめんね、と付け足しながら、無垢な目で私を見つめる彼を抱き上げては膝の上に乗せて。
コロンっ、と転がりついでに頬を私の体に擦り寄せると、ハロくんは膝の上で丸くなった。
「・・・・・・」
気を許されていることに、悪い気はしない。
けど、そんな良い人間でもないのに、と悲観的にもなってしまう。
そういう性格は、どうにも直らないようで。
「ひなた」
「!」
気を抜いていた瞬間、呼ばれた名前に素早く反応し顔を上げると、いつの間にか目の前に立つ零がいた。
「・・・少し、聞きたいことがある」
「う、うん・・・」
どこを見ているのか分からない彼の顔を見上げながら返事をすると、立っていた彼は徐ろに私の側へ腰を下ろして。
何を聞かれるのかと身構えては、未だ視線を伏せる彼の横顔を盗み見た。