第108章 零まで※
「・・・・・・」
でも、やはり素肌同士では落ち着かない。
このまま抱き合っていては、再び寝付けそうにもない。
せめて下着だけでも、と僅かに体を起こしかけた時。
「ッ!?」
体はいつの間にかベッドへと押し付けられ、瞼は咄嗟に閉じてしまっていた。
何が起きたのか、分かったようで分からないままゆっくりと瞼を開けば、私に覆い被さるようにして動きを封じる、零の姿が目に映った。
「・・・は・・・ぁ、っ・・・」
でも彼の姿はいつもと少し違い、焦った様子な上、息を詰まらせている姿がそこにはあって。
「・・・零?」
どうしたのかと目で問うが、焦りを隠しきれない様子のまま、彼は私を見下ろした。
今、彼に何を聞いても反応が返ってこないと察すると、静かにその様子を見守って。
「・・・・・・っ」
ようやく落ち着きを見せた頃、恐る恐る彼の頬に手を伸ばした。
それでも彼は、長くも荒い呼吸のまま、意識がまるで私に向いていないような様子で、汗を流した。
「・・・大丈夫」
言い聞かせるように、彼の目を見て言うけれど。
目は合っているのに、私は見えていないようで。
「・・・・・・」
何分・・・経っただろう。
一瞬にも、数時間にも感じたその時間は、決して心地が良いとは言えなかった。
「零・・・」
もう一度、呟くように名前を呼べば、ようやく彼がピクリと反応を示した。
「・・・ひなた・・・」
「うん・・・」
我に返った様子で私の名前を呼ぶ彼に返事をすれば、彼の呼吸も落ち着きを取り戻してきて。
寝ぼけていた、という単純な理由なら良いけれど。
絶対にそうとは言えなかった時間を思い返しながら、彼の顔を両手で包むように触れた。
「・・・すまな、っ・・・」
それは、彼が謝るということを、どこか察したから。
でも謝られたくなくて。
案の定、謝罪の言葉を口にしそうになった彼の口元をグッと両手で寄せ、それを拒んでみせた。