第108章 零まで※
「・・・ありがとう」
それが何のお礼なのかも分からないけど。
零からは、困ったような笑みを向けられながら、一言そう言われてしまった。
「どう、いたしまして」
とりあえず、それにはそう返事をして。
こちらは余裕の無い笑みを向けた。
「んッ、ンん・・・!」
さっきよりも気持ちは軽いのに。
彼のモノが更に質量を増したような気がして。
苦しさは、強くなった。
「僕の日本で、ひなたに・・・銃創をつけたこと・・・っ、本当に・・・後悔してるんだ・・・っ」
腰の動きは止めないまま、彼は切れ切れにそんな事を口にした。
前にその話をして、私は決着はついたと思っているのに。
やはりいつまでも引っ掛かってしまうようだ。
きっと赤井さんのことだから、零が赤井さんを恨む原因になった零の友人のことについても、未だに話していないのだろうな。
話せば、この傷は本来誰にもつかなくて良かった物だと、零は酷く自分を責めるだろうから。
「・・・んっ、零・・・ッ」
珍しく、私の言いたいことは伝わっていないのだろうかと、彼に一度静止を求めて。
緩やかに動きが止められると、何の話をするのかと、不安そうに彼は私の目をジッと見つめた。
「・・・!」
そんな彼の頬を掴むと、軽くそれを引っ張って。
ヘラッと情けない顔で笑いかければ、零の表情はみるみる内に泣きそうなものに変わっていった。
「・・・すまない」
これも、何に謝っているのか分からないけど。
もう分からないままでいいや、と。
彼を抱き寄せて。
暫く震える彼をそのまた抱きしめていると、彼はまた謝罪の言葉を口にした。
寧ろ謝らなければいけないのは、私の方なのに。