第108章 零まで※

「･･･っ、ん･･･！」

肩の、傷。

消えることのない、銃創。

「･･････」

まだ、気にするのか。

1年以上経って、久しぶりに見て。
尚更気になってしまうのか。

それを見ている彼の表情は酷く悲しそうで、さっきまでの不敵な笑みは、それを隠すためのものだったのではないかと思う程で。

「ひぁ、ぅ･･･ッ！！」

でもその表情に目を奪われていたのも一瞬。
すぐにまた彼の腰が打ち付けられ、快楽が体を襲う。

その度にシーツは強く握られ、シワを深く強く残してしまった。

「ひなた･･･」

汗ばんだ体は、肌がぶつかり合う音を更に卑猥にさせる。

互いが混ざり合う音に犯される感覚を覚えながら甘い声を漏らし、体を捩らせた。

その最中に呼ばれた名前に反応できないままでいると、彼は先程まで触れていた私の肩の傷へと唇を触れさせて。

「･･･すまない」

小さな小さな呟くような声で、何故か謝罪の言葉を口にした。

それは肩への傷への謝罪なのか。
それとも別のものへなのか。

ただでさえ頭の回転が鈍っている私には、その理由は分からないけど。

私が彼に許していない事など、一つもないから。
彼が謝る必要というものが元々ない。

でも彼がそれでも一生、この傷のことで悩むというのなら。

「･･･ッ･･･！」

私も、残してやる･･･と。
彼の肩へと、それなりの力で噛み付いた。

血が薄ら滲む程。
歯が僅かに食い込む感覚に強い罪悪感を覚えながらも、そこに噛み跡を残した。

「･･･ごめん」

丸い目をして驚く彼に、一応こちらも謝罪の言葉を口にして。

勿論、謝る気持ちは一つもない。

それは私が残したくて残したものだ。
この肩の傷と同じ。

彼が本来残したかった赤井さんにではなく、私がここに残したかったものだから。

「･･･ふっ」

私の突然な行動に、彼は小さく笑いを漏らして。

今度は自身についた傷へと、その手を伸ばした。