第108章 零まで※
「ゆっくりで構わないから・・・呼吸をしろ」
動きながら、彼はそう言うけれど。
「でき、な・・・ッ」
だったら動きを止めてほしいと、首を大きく横に振った。
達してしまったばかりで、体は酷く敏感なのに。
その中、微弱な快楽は脳も体もおかしくさせる。
それなのに、彼は。
「・・・だろうな」
何故か納得するような言葉を呟いては、小さく笑みを向けた。
それが私の中の僅かな対抗心のようなものを刺激して。
「ひなたは、ここが・・・弱かった、な・・・っ」
少し言葉を詰まらせながらも、彼は比較的優しく私の弱い部分を突いてみせた。
それでも体は大きくビクンッと跳ね、はしたない声が再び部屋に響いた。
「零・・・ッ」
これ以上はダメだと、本当におかしくなる、と。
再び首を振った後、彼を見つめてみたけれど。
「・・・そういう顔が一番、煽られる」
結果、逆効果だったようで。
いつの間にか滲んでいたのか、零れそこねた涙を彼の指で拭われると、今度は深く、強く。
「ッあぁ、ぁ・・・!!」
私のナカに、彼のモノが突き刺さった。
「れ、い・・・だめ・・・ッ」
駄目では無いことは、彼も私も分かっている。
でも口を開けば、拒むような言葉しか出てこない。
それは多分、達する度に脳裏で感じる消失感のような、あの感覚を感じるのが少し怖いからで。
「・・・駄目じゃ、ないだろ」
数分前と同じ返事。
けれど、声色はその時よりもずっと優しく、温かく。
私をギュッと抱き締めると、落ち着かせるように軽く頭を撫でて。
「顔を見れば・・・分かる・・・っ」
再び奥を貫きながら。
言葉の奥で快楽に歪む声で、彼はそう言った。
「ッ・・・ふ、ぁあ・・・!」
体を密着した為、動きは小さくなったけれど。
私のナカで質量を増すばかりのそれは、私の呼吸をどんどんと荒くさせ、絞り出すように私から甘い声を吐き出させた。