第108章 零まで※
「ハロ、紹介しよう。僕の大切な人だ」
和室の部屋に2人で座り込むと、零は擽ったい言葉で私をそう紹介して。
ハロと呼ばれた子は私の顔をジッと見つめ、それを目に焼き付けているようだった。
「こんにちは、ハロくん。よろしくね」
「アン、アン!!」
顔を近付ければ、ハロくんも顔を擦り寄せてくれて。
クルクルとその場を回っては、彼なりに歓迎を表してくれているようだった。
「こら、ハロ。少し落ち着かないか」
子どもに話すように言う彼に、どこか心が温かくなって。
くすくすと笑いを漏らせば、彼は困ったように笑いながらため息を吐いた。
「・・・ひなたの事が気に入ったようだな」
そうだ、とでも言ってくれているように、ハロくんは私の膝の上に座り込んで、零に誇らしげな表情を向けた。
それを見た彼は、少し居心地の悪そうな表情をして。
「・・・良い人に迎えてもらって、良かったね」
頭を優しく撫でながらハロくんにそう話せば、目を細め優しい顔を向けられた。
良かった。
それはハロくんにも、零にも言えることで。
「ハロ、そろそろ退いてくれないか」
「アンッ」
零にそう言われたハロくんだったが、元気よく「イヤだ!」と返事をしては、私の膝の上で丸くなってしまった。
「ハロ・・・」
諦めの声で名前を口にしながら、ハロくんに視線を落とした彼に、またくすくすと笑ってしまって。
この2人、どうやら似た者同士で良いコンビになっているようだ。
「・・・コーヒーを入れてくる」
「ありが・・・」
目を閉じてしまったハロくんが暫く動く様子がないことに、今度は長いため息を吐きながら彼は徐ろに立ち上がって。
今はお言葉に甘えようと、彼が立ち上がると同時にふと顔を上げた瞬間だった。
「!」
顎に軽く手が添えられ、口付けられた。
不意打ちのそれに目を丸くすると、その間抜けな表情を見て彼がフッと笑って。
「まさか僕が、ハロにお預けをくらうとはな」
そう言った彼の表情は、勝ち誇っているようにも見えて。
それらの彼の行動で、私の顔が赤く染まらないはずがなかった。