第108章 零まで※
「え・・・っと・・・」
別に後ろめたい事はないけど。
でも直接その事を言われると、どこかいたたまれない気持ちになってしまう。
「あ、赤井さんから聞いたの・・・?」
「ああ」
そうでなれければ、彼は知り得ない情報だろう。
でも何故、赤井さんがその事を零に伝えたのか。
「で、でも断ったよ・・・っ」
「知っている」
何を動揺しているのだろう。
これでは後ろめたい事があると白状しているようなものじゃないか。
「・・・別にひなたが赤井を選んでも、責めはしないさ。赤井は許さないがな」
・・・許さないんだ。
寧ろその場合、責められた方が楽な気もするが。
いや、そんな事は絶対に無いけど。
「1ヶ月前、赤井からひなたが生きている事と同時にその事を聞いて、ひなたは赤井を選んだんだと思ってしまった」
わざわざ言う赤井さんも、大人気ないと言うのか何と言うのか。
・・・腹いせというやつだろうか。
「もう、僕が手を伸ばしては駄目なんだと」
彼がそう思うのは無理ない。
指輪も、返してしまっていたから。
「でもひなたは、ずっと待っていると聞かされた」
零が話している間、それを静かに見つめながら聞いて。
彼が何を考え、どう思ったのか。
それが気になったからというのはあるけど。
私が変に何かを言えることでは、なかったから。
「・・・ひなたを信じなくて、すまなかった」
でもその言葉には。
「そんな事ないよ」
はっきりと、否定の言葉を口にした。
「零はずっと、探してくれてたんでしょ?」
私は赤井さんから、そう聞いた。
「・・・でも僕では見つけられなかった」
見つからないように、探さないように。
こういう方法を取ったにも関わらず、彼は探してくれた。
そして。
「見つけられたよ?」
こうして、私を迎えに来てくれた。