第108章 零まで※
「そういえば、風見さんは元気?」
コナンくんの近況を聞けば、自然と彼の周りの環境が気になって。
零に一番近い人と言えば彼だろうと思い尋ねたが、聞いてしまった後で少し不安になった。
彼もまた公安で、零と働くことのできる存在。
・・・叱られたり、最悪の場合が起きている可能性だってあった。
「ああ、元気だ」
が、それはすぐに安堵へと変わった。
「今日はハロの・・・」
「?」
良かった、と胸を撫で下ろしていると、彼は聞きなれない言葉を口にして。
目を丸くし、瞬きを繰り返しながらそれは何なのかと彼を見つめていると、私が検討のついていない事に彼が気がついて。
「・・・そうだ、ひなたに言っておくべきだな」
何だろう。
何を言われるのだろう。
安堵したり身構えたりと、中々気持ちが落ち着かない。
そんな中。
「犬を飼い始めたんだ」
彼はまさかの事を口にした。
「い、犬?」
零が、動物を。
「・・・意外だね」
「そうか?」
私が居ない間に、彼は新しい家族を迎えたのか。
それは私にとって、そこはかとなく嬉しいことだった。
新しい家族を迎えたということは、彼は私が願った通り、生きようとしていた証だと思うから。
「その子の名前がハロというんだ。僕がこっちに来る間、風見に世話を任せている」
そうか。
さっきのはその子の名前だったのか。
「可愛い名前」
零が贈った名前だと思うと、自然と笑みが零れる。
でも。
「ひなたともすぐに打ち解けるはずだ」
「・・・・・・」
彼のその言葉には、何も言えなくて。
「・・・ひなた」
改まった様子で私を呼ぶ声に、反応はしてみせるけど。
「僕の所に、戻ってきてくれないか」
やはりその言葉には、すぐに返事ができなくて。
でもあまり空白の時間を作ってしまっては変に思われてしまうから。
「・・・ノーなんて言わせないくせに」
そう、誤魔化すように返事をした。