第108章 零まで※
「・・・戻ってきて、くれるか?」
「ポアロに?」
改まった様子で尋ねる彼に、やはり私が戻るべき所はそこだと思っているのだろうかと、小首を傾げて。
「そう聞くということは、日本に戻る気はあるんだな」
でも、どうやら私の質問は僅かに見当違いだったようで。
「・・・そうだね」
ただ自然とこう尋ねてしまうということは、自分でも日本へ戻ることが前提なのだな、と気付かされて。
というよりは、日本に居る理由はあっても、アメリカに居る理由が無い。
この家も、赤井さんに用意してもらったものだから、きっと近いうちに出なければならないだろうし。
・・・それに。
「コナンくんにも話をしたいしね」
彼とは1年前のあの日以来、会えていない。
改めてお礼や色んな話をしたい。
組織の事が片付いたのなら、もう零とも話が・・・。
「・・・彼のことだが」
「?」
そう考える中、零は何故か目を伏せながら口ごもって。
コナンくんがどうかしたのかと目で尋ねれば、彼は暫くの間を空けた後、ようやく口を開いた。
「先日、両親の元へ帰ったそうだ」
「!」
・・・冷静に考えればそうだ。
彼が何故、江戸川コナンになっていたのか。
その事実と、組織の事が片付いたという点を結び付ければ、自ずと答えは出てくるじゃないか。
「そっか」
彼が飲まされてしまった、アポトキシンの解毒剤が完成していたって、何らおかしくない。
きっと元いるべき場所に帰ることができたのだろうと思うと、安堵と共に自然と口元が緩んだ。
「驚かないのか」
零は私の反応に驚いているようだが、確かにそれが正しい反応なのかもしれない。
「その内、会えるような気がするから」
今は工藤邸にいるかもしれないし、探偵として本当に全国を飛び回っているかもしれない。
江戸川コナンが工藤新一だということは、本人の口から言うべきことだろうから。
私からは言わないけれど。
きっと、また会えるだろう。