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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第107章 零から




「?」

久しぶりのそれだったが、解読することに大した時間は使わなかった。

アメリカ生活で、英語にも慣れが出てきたおかげかもしれない。

ただ問題なのは、書かれている内容だった。

『いつもの場所で待つ』

・・・何故、というのが率直な考え。
きっと場所は、この先のビーチのことだろうけど。

私の部屋にも勝手に入る彼が、わざわざ外ではないといけない用事があるのだろうか。

とりあえず、見てしまったからには向かわない訳にもいかず。

進んで来た道を少し戻りながら、彼が待っているであろうビーチへと向かった。

いつも静かで人気は少ない場所だが、今日はやけに人が少ない。

そんな事を気にしながら、とぼとぼと砂浜を歩いて。

「・・・・・・」

いつも腰掛ける場所に着いたけれど。
そこに赤井さんの姿は無い。

待っているのではなかったのか、とため息を一つ波に流した。

いや、そもそも彼の指定した場所が違ったのだろうか。

いつもの、と聞いてここだと勝手に思い込んでしまったが、その可能性は大いにある。

面倒な言い方をせず、直接場所を言ってくれれば良いのに。

そう文句の一つでも言ってやろうかと、スマホを取り出しかけた時だった。


「・・・ひなた」


聞こえるはずのない声が。
波の音と共に耳に届いて。

それは私の背中側から。

だから、気のせいではないかと思った。

「・・・っ」

そんなはずない。

そう思いながらも、どこか期待はあったと思う。

けれど、どこか恐怖もあったから。

ゆっくりと、恐る恐る。

感覚はスロモーションのように、振り返った。


「ひなた・・・ッ」


気のせい・・・じゃ、ない。


「零・・・」


居てはいけないはずのない彼が、目の前に居る。
頭の中では、これは嘘だと何かが叫んでいる。

幻覚ではないかと思った彼がこちらに走ってきて、私を強く抱き締めた瞬間。

その温かさと力の強さと反動で。

本物なのだと、確信した。

「ひなた・・・、ひなた・・・ッ!」

彼は私を強く抱き締めたまま、何度も顔を擦り寄せた。

そして、何度も何度も。
苦しそうにも嬉しそうにも聞こえる声で。

死んだはずの私の名前を叫ぶように呼んだ。




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