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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第107章 零から




「外には出ないのか」
「何の為に出るんですか・・・?」

ベッドに横たわる毎日。
食事もろくに取らず、ただ息をするだけ。

生きているとも死んでいるとも言えない。

本当はもうこの世に未練なんてないから、居なくなっても良かったのだけど。

・・・彼に、生きていてほしいと言われたから。

だから私の命は、何とか保っている状態で。

「少しは体を動かせ。でなければ回復が遅くなるぞ」

肩の骨折を理由に動いていなかった所もあるが、歩く気力なんて到底無かった。

・・・彼を忘れられる日なんて、本当に来るのだろうか。

「彼のことを考えている時の顔だな」

ベッドに横たわる私の上へ覆い被さるように、赤井さんがそれをギッと沈ませた。

「忘れられる手伝いくらいは、できると思うが」

相変わらず、人の考えを読むことが好きなようだ。

「・・・赤井さんじゃ無理ですよ」

いっそ、そうしてしまえれば。
なんて・・・考えなかったと言えば、嘘になる。

「物は試しだと思うがな」
「時間を無駄にするだけですよ」

彼も女性には困らないだろうに。
どうして私に付きまとうのだろう。

母のことを抜きにしても、必要以上に構うことは無いはずだ。

「とにかく動け。俺の案内が嫌なら、ジョディを呼ぶ」
「ちょっ・・・、赤井さん・・・!」

そんな事を言いながら、彼は無理やり私を持ち上げて部屋から運び出した。

「下ろしてください・・・っ」
「外に出たらな」

本当はまだ、体力的に一人でろくに歩けない。
それは赤井さんも分かっている。

けれど塞ぎ込んでいれば、それが長引くことも分かっていた。

・・・要は、赤井さんなりの元気付けのつもりだったのだと、思う・・・が。

「・・・・・・っ」

外に出れば、途端に息が詰まった。

暫く慣れないホテル暮らしだった上、知らない土地での生活は、やはりそれなりのストレスがあった。

その上、他人から向けられている視線が何故か怖くて。

心拍数が上がって、冷や汗が出る。

「・・・大丈夫か」

人気の少ない場所で私を下ろすと、彼は視線を合わせるように屈みながら尋ねてきた。




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