第107章 零から
「・・・赤井秀一か」
「他にこんな事ができる人間なんていないわ。組織のスナイパーでも無理よ」
零も薄らと気付いていたのだとは思う。
私を撃ったのが、赤井秀一だということに。
「そ、そんな・・・っ」
その時に一番動揺していたのは、キャメルさんだった。
大量の血液を流しながら青白くなった私を見て、彼もまた青い顔をして倒れそうになっていて。
倒れそうな理由の一つに、撃ったのが赤井秀一だということもあったのだろうけど。
「亡くなった彼女が、どうして必要なんだ」
零は動かなくなった私を抱きかかえ、冷たい目付きで尋ねたらしい。
「メモリーを飲み込んでいないとも言えないわ。まだ彼女は調べる必要が・・・」
「それはこちらが調べる。ここは日本だ。君達の出る幕ではない」
少しでも私の体への負担を減らす為、ペイント弾と一緒に中和剤を打っている。
その為、FBIも私を早く回収する必要があった。
「残念だけど、貴方の方が彼女を調べる資格は無いのよ」
それは恋人である彼が私を調べて、万が一大事な物が出てきてしまった場合。
彼がそんな事をするとは思えないが、証拠隠滅しないとも言えないからだ。
私は死んでいることになっているのだから、庇う必要は無いけれど。
「僕ではない。こちらで調べると言ったんだ」
「同じことよ」
ああ言えばこう言うのはどちらも同じで。
その膠着状態を破ったのは、少し先で起きた小規模な爆発だった。
「!?」
沈むような低い音を立てたかと思うと、遅れて爆風が彼らを襲って。
「風見!」
「は、はい・・・!」
風見さんは零から短く指示を受けると、一人でどこかへ消えていった。
FBIも爆発の正体を数人で確認する為向かったようだが、ジョディさんと零は変わらない体勢で。
「君達に付き合っている時間はない。これ以上僕達に構うのであれば・・・」
そう零が警告を出している最中、ジョディさんが彼から一歩、距離を取った。
それを不審に思った彼は、言葉を止めて。
考える隙を与えない。
赤井さんはそう言っていた。
その言葉通り、零がジョディさんの行動に疑問を持ったであろう瞬間、どこからか、カランという金属音が響いてきた。