第107章 零から
「・・・・・・」
今まで、ジョディさんやキャメルさん、勿論零の事について尋ねたことがなかったから。
聞かれないことに彼がわざわざ言う必要は無い。
このタイミングの報告になったことは、全て私のせいだ。
寧ろ、知らなくても良かったことなのだから。
「・・・大丈夫、なんですよね」
「ああ。安心しろ」
彼に、見つからなければ・・・今は何だって良い。
それを確認しては、一先ずは胸を撫で下ろした。
「・・・どこで気付いたんでしょうか」
考えられるとすれば、仮死状態になった私を見抜いたか。
でも、見抜く要素がどこにあったのだろうか。
ーーー
一年前。
「ひなたッ!!!」
「降谷さん・・・っ」
仮死状態になった私をキツく抱き締めながら、零は何度も名前を呼んだ。
風見さんも冷静さは欠いていたようだが、零ほどではなく、彼を鎮めようとする姿を赤井さんとFBIの人達が確認している。
「一度、陸に戻りましょう・・・っ」
海の上では何もできないと、風見さんは焦りつつもモーターボートを動かした。
その間、彼は冷たくなっていく私に涙を落とし続けて。
「また・・・守れなかった・・・ッ」
手の平に血が滲むほど強く握った拳は、大きく震えていて。
後悔の言葉を、幾つも、何度も。
苦しそうに零したらしい。
「・・・・・・」
風見さんは何も言えないまま、急いで陸にボートをつけた。
そこにFBIが待機していると知っていてのことかは、分からないが。
「彼女を渡しなさい」
「・・・ッ」
モーターボートから降りた所を、ジョディさんやキャメルさん、その他にも大勢のFBIが取り囲んだ。
ジョディさんが彼らに銃を向けると、風見さんは反抗的な態度を取ったという。
「今すぐそこを・・・っ」
「風見」
数分前とは打って変わって、その時の零の目に涙は無く、公安の降谷零としての顔つきだったらしい。
そんな彼は、今にも食いかかりそうな風見さんを冷静に止めて。
「・・・彼女はもう亡くなった」
「知っているわ。我々が仕留めたのだから」
その時の零は淡々と話をしつつも、底知れぬ怒りは隠しきれていないなかった。