第16章 話合い
沖矢さんはソファーから立ち上がり、床に座り込む私に近寄って傍に膝を着いた。
「貴女をお守りする為ですよ」
どうして、なんて聞いてもあの言葉しか返ってこないだろう。
彼は行動をするのに一々理由を持たないようだし。
「だから私が組織の車を追いかけたこと、知ってたんですね・・・。その後も偶然を装って通りかかった」
そう言うと、沖矢さんは肯定の笑いを見せた。
「二日前、彼に会いましたね?」
「・・・はい」
「その時、貴女の手荷物を彼が漁ることができる時間があったり、もしくはスマホを貸したということは」
「・・・・・・」
思い当たることは沢山ある。
でも、その中でも・・・。
ストーカーが追いかけてきた時、スマホを落としてそれを透さんが拾っていた。
私が気付くまでずっと。
その事を沖矢さんに話すと。
「恐らく、僕が入れたアプリを消したのはその時でしょう。そして先程、勝手ながら貴女が眠っている間にスマホを調べましたが、新たにアプリを入れた形跡はありませんでした」
この人は色々と訴えれば勝てそうだ。
そんなことはしないけども。
「彼を部屋に入れたことや、その服以外に貰ったものなどは」
「・・・どちらもあります」
室内に入れたことは一度だけ。
あの日は絶対に忘れもしない。
透さんとの大切な日・・・だった。
そして貰ったものと言えば。
「貰い物は・・・置時計を、頂きました」
大切にしているあのアンティーク風の置時計。
「なんと言って貰いました?」
「別に・・・ただプレゼントと言って・・・」
いや、その後に言っていた。
「よく見える位置に・・・置い、て・・・」
言葉を進める度に鼓動が早くなる。
そんな・・・馬鹿な。
「その言い方なら恐らく、監視カメラが仕掛けられているでしょうね」
血の気が引いた。
そんなことは考えたくもないが、疑ってしまう自分がいる。
「貴女が会ったストーカーと言うのも少し怪しいですね。彼の仲間と協力して貴女を怯えさせ、スマホを手にする機会を伺った・・・と考えた方が自然のようですが」
それは半信半疑だったが沖矢さんの言うように、そう考えれば自然と捉えられた。
でもそう思えば思う程、悔しくて苦しくて。