第106章 ゼロへ
「・・・ジョディさん」
「何かしら」
痛い。
痛くて仕方ない。
「彼は、関係・・・ありません」
「・・・・・・」
心臓も、肺も、足も。
心も。
全部、全部。
チクチクと、ズキズキと。
全てを抉り出したいくらいに。
痛過ぎて。
「ひなた・・・っ」
「言っている意味・・・分かりますよね」
零が何か言いたくても。
言わせない。
何か言ったとしても。
意味は無い。
「・・・分かったわ」
「ジョ、ジョディさん・・・っ」
彼は関係ないから、これ以上手は出さない。
でもそれは、つまり。
「待て、FBI・・・!」
私はどうなっても良いから、零には一切干渉しないでほしい。
「彼女を消す理由になっていない!そもそも彼女を消して、搾取された情報がこれ以上漏れないとは・・・」
その理由は多少、無理なくらいにしようと赤井さんから提案を受けていた。
それは赤井さんなりの不器用な気遣いで。
「取られた情報が何なのか、どう漏れるのか。そんなことはこの際、関係の無いことよ。彼女を消すのは・・・」
もう自分は、零に許されることはないだろうから。
ならば最後まで嫌われ者になる、と。
「私達との取引に違反したからよ」
「・・・・・・ッ」
零に渡したメモリーには、1つだけデータが入っている。
正直、最後まで渡すかどうかは迷っていたが、私の最後の意地悪だと思って。
「・・・この国でそんな勝手は、僕が許さない」
私の肩をグッと引き寄せながら、その手の力が強まった。
「貴方が許さなくても、私たちは遂行するまでよ」
本気だということを見せつけるように、ジョディさんは私達の隣を掠めるように発砲してみせて。
「・・・風見、聞こえるか」
そちらがその態度ならと言いたげな表情で、零は風見さんにワイヤレスイヤホンで連絡を取って。
私を支えたまま、ゆっくりとFBIから距離を取るように後ろへと後ずさった。