第106章 ゼロへ
「彼女がそこまでできる訳・・・」
・・・そう、私だけではできない。
協力者がいてこそできた事で。
それがどのタイミングで情報が漏れるかまで、彼らは計算していた。
「・・・・・・」
思わず、口角が上がった。
あまりにも上手くいき過ぎていて。
FBIの彼と・・・あの小さな名探偵の底力を見た気がするから。
「その女を庇うなら、お前も一緒に送ってやる」
ジンはそう言いながら、銃をこちらに構えて。
「あの世にな」
そう吐き捨てるように言った。
正直な所、今この男に撃たれても私は問題ないのだけれど。
それでは零が危険だから。
ジンと話すからと、零に一度降ろしてもらうよう合図をして。
彼は一度拒否したものの、大丈夫だからと何度か説得すれば、渋々私をゆっくり地面に降ろした。
「命乞いか?」
不敵に笑うジンを睨むように見ては、一度大きく深呼吸をして。
彼の前に立ち、片手を広げ、零を庇うようにジンとの間に入れば、ピリッとした空気が体を刺した。
「・・・バーボンは、関係ない」
どうにか口を動かしながら、ジンから目は離さず。
ただ、その姿をきちんと捉えられているかと言われると、そうではなくて。
「ひなた・・・?」
何か疑問に思うように零はこちらを見てきていたが、再び、大丈夫だからと目で説得すれば、彼はそれ以上口を挟まなかった。
「撃ちたいなら・・・撃てばいい。その代わり、組織から持ち出した情報は、私が定期的にログインしないと・・・バラ撒かれるシステムにしてある」
どうせ彼らは、私が重大な情報を取ったということしか掴んでいない。
それがどうリークされるのか。
そこまでは分からないはずだ。
「・・・残念だけど、それを解くまでは殺せないみたいね」
何処からともなく姿を現したベルモットが、そう口を挟みながらジンの隣に立って。
どちらかというと、ジンより用心すべきは彼女の方かもしれない。
そんな事を思いながら痛む胸辺りの服を掴んでは、近付く時を肌で感じた。