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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第106章 ゼロへ




その選択が、一番残酷なことは分かっていた。
でも同時に、一番効果的だということも。

姿を消すのであれば、徹底的にしなければ。

彼の大事な友人の一人も・・・その覚悟があったのだろうから。

「でも、逃げないよ」

逃げるつもりがないのは勿論だが。
本当は逃げられないだけ。

この運命からは。

・・・それに。

「零も・・・逃げないでしょ」

最期が来るまで、貴方の傍にいたいから。
だから逃げない。

「・・・ひなた」

零れるように私の名前を呼ぶ彼に、自然と口角が僅かに上がってしまった。

・・・その時が近付いたのが手に取るように分かった上、最後に彼の声で私の名前が聞けたから。

「ひなた・・・?」

私を強く抱き締めていた彼の腕をそっと外すと、フラつく様に一歩足を進めて。

息が、苦しくなってきた。

もしかするとさっきまでの苦しさも、彼が抱き締めていたせいではなかったのかもしれない。

どうやら・・・効きは良いようだ。

「どうした、ひなた・・・っ」

フラつき、壁に体を打ち付けるように倒すと、そのまま壁を頼りに何とか立っていて。

異常な私を見て彼は、声を潜めることも忘れたのか大きな声で私を呼んだ。

「・・・ひなた、何を飲んだ・・・!」

尋常ではない汗と乱れた呼吸。

案外時間は残されていないのだなと悟っては、組織のスナイパーから確認できる位置へと歩いた。

「ひなた!」
「・・・大丈夫」

答えの催促をされたが、そう受け流して。

向こうから私が確認できる位置まで来たとは思うが、あくまでも狙いはそこではない。

なるべく息を整え、私を背後から支えようとする彼へと、体を向けた。

「・・・ここにFBIにとって不利な情報が入ってる」
「な・・・」

突拍子もなくそう言って、ポケットから小さなメモリーカードを出せば、当然彼は困惑の表情を見せた。





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