第106章 ゼロへ
この靴はジョディさんから借りたものだ。
その時はこんな真新しい発信機なんて勿論ついてなくて。
仕掛けることができたのは、ただ1人。
「・・・零」
彼だけだ。
手当てをした時、彼は靴にも触れていた。
一度私の前から姿を消したのは、試す為でも、手当てをする為でもあったが・・・これを仕掛る為でもあったのか。
私の発見機には引っ掛からないよう、細工までして。
まるで最初から、私がいなくなることを読んでいたみたいだ。
「・・・・・・」
それに、もう1つ嫌な事実がある。
組織の人間がこの発信機で私達の居場所を特定したのであれば。
彼が・・・バーボンが、組織にリークした事になる。
・・・零は、組織までも利用しているのか。
前にも一度、彼は味方ではないかもしれないと思ったことがあるが、今回もそれに近く感じる。
「ッ!!」
車は勢いよく走り続けているのに。
まだ何度か車体を狙って狙撃されている。
乗った時のドアの分厚さから見ても今乗っているこれは防弾車だとは思うが、居場所と車を特定されているという時点で安心はできない。
「・・・飛ばしますよ」
キャメルさんの言葉通り車のスピードが上がると、体への反動は更に強くなって。
彼がわざわざ入り組んだ場所を選んで通ったおかげか、それ以降狙撃を受けることは無く、追手もいる様子は無かった。
ーーー
「奴ら、何のつもりだったんでしょうか・・・」
さっきの出来事を思い返すが、やはり少し違和感がある。
その不安を吐き出すようにポツリと呟けば、キャメルさんは直接私に視線をやって。
1つは組織の人間が姿を見せなかったこと、もう1つは何故あの場所で先を塞ぐようにしたのかということ。
それに・・・撃ってきたのは上からだけで。
そこに意図があるのかは分からないが、探偵であれば・・・この疑問を残しはしないのだろうな。