第106章 ゼロへ
「ジョディさんには伝えていなかったんですか」
「君に伝えていないのにジョディ達へ伝えていたら、君は怒るだろう」
怒る怒らないの問題ではない気もするが。
とりあえず組織の人間がつけた物でないなら・・・安堵だけしておこう。
「・・・じゃあ、あの靴の指示は何だったんですか」
「君の靴と反応して、発信機が作動するようになっていた。あとは君が予想した通り、メールや電話の傍受もな」
・・・発信機がどこに仕掛けられ、何がどう作動するか。
そこまで調べ上げているのに、それを取り除かなかったことが、酷く公安を嘲笑っているように感じた。
きっと僅かな油断を誘いたかったのだろうけど。
「それに、君にはジョディの車で靴を脱いでもらいたかったが、そう指示をする訳にもいかないだろう?」
だからわざわざ、最初に靴のことについて暗号文を・・・?
「あとはジョディに、君を降ろせという指示を電話で出せば、彼らは飛んでくる。ただ、発信機は作動させたままだからな、そちらにも手は回る」
なるほど。
・・・とは、少し言い難い。
「何故、零がいると分かった上で私を降ろしたんですか」
分かっているなら降ろす必要はなかった。
私は、そう思うのだけど。
「君の決意が揺るがないとは、限らないだろう」
「・・・・・・」
つまりは、私を試したのか。
零といい、赤井さんといい。
やはり似た者同士じゃないか。
「こういう答えで満足か?」
満足していないのは、互いに合わせた視線で分かっているくせに。
「それに、犬が多過ぎてはこちらも立ち回りづらくなるんでね」
公安の動きを乱す為でもあった、ということか。
彼らは、簡単に協力してはいけないという決まりでもあるのだろうか。
もっと手をとりあえば、味方内でこんな事をしなくても済むのに。
・・・なんて考えは、身勝手なのだろうか。
「君の気持ちに、変わりはないということで良いな?」
彼らに一瞬揺るがされたけど。
やはりFBIもあまり気は進まないのだろうか。
最初はそっちから、話を持ちかけたのに。