第106章 ゼロへ
「あ、赤井さん・・・!?」
まさか、こんな所で会うとは思っていなかったから。
風見さんも同じことを思っているだろうけど。
それ以上に驚いているのは。
「・・・ま、待ってください・・・!」
風見さんに・・・銃を向けていることで。
「動かない方が良い。言葉通り、痛い目をみるぞ」
それは私ではなく、銃を向けている風見さんに放った言葉で。
そう言われた風見さんに勢いよく目を向けると、動きたくても動けなくなっている彼が映った。
流石に、凄腕のスナイパーとして名を馳せている赤井さんに、面と向かって銃を向けられればそうなるか。
風見さんが指示通り動かなければ、赤井さんも撃たないだろうが・・・私はここから赤井さんの元へと行けば良いのだろうか。
それをアイコンタクトで赤井さんに尋ねようと、視線を戻しかけた瞬間だった。
「・・・ッ!!」
予想に反し、パァンっという耳を刺すような銃声が辺りに響いて。
思わず瞼を閉じてしまったけれど。
数秒後にはすぐに開いた。
彼が発砲した先に体ごと、風見さんの方へと向かって。
「風見、さ・・・っ」
そこには先程よりも額から血を流す風見さんが地面に倒れていて。
一瞬で体に震えが走った。
「風見さん・・・っ、風見さん!」
まさか、撃つなんて。
彼の名前を呼んでは、とにかく焦る感情を押し殺した。
「だ、大丈夫です・・・」
風見さんはゆっくり倒れていた体を起こすと、自身の耳元へと手を伸ばして。
それを見て、赤井さんが何を撃ったのか察した。
零と電話を繋いでいた、ハンズフリーイヤホンだ。
その破片が彼の額を僅かに切り、更に顔へ傷を増やしてしまったようで。
「流石、日本の警察は優秀だ」
・・・私に言った言葉を、今度は当人に言ってしまうなんて。
無神経というのか、皮肉というのか。
少なくとも、褒めているようには聞こえない。
「行くぞ」
赤井さんはそう言って銃を下ろすと、私にそう声を掛けた。
風見さんは私を止めようと必死に体を動かしたが、その動きは酷く鈍くて。
それから逃げるのは容易でしかなかった。