第105章 意図的
「ジョディさん、闇雲に動けば見つかるリスクが上がります。監視カメラの少ない場所を通ってはいますが」
「そうね・・・車を何度か乗り換える必要もありそうね」
準備が不十分なのは、私もFBIも、そして公安も同じか。
・・・その点、組織はどうなのだろう。
「でも、よく彼女が鍵の一部に使われていると分かりましたね?」
それは私も気になっていた。
元々組織に潜入していた母が仕掛けたことだから、いつバレてもおかしいことではなかったのだけど。
「彼女のお兄さんが遺したデータが・・・奴らに見つかってしまったのよ」
・・・データ。
それも鍵の一部なのか。
「本当は公安の手に渡るようにしていたんでしょうけどね。残念ながらそれは組織が先に手に入れてしまった」
・・・何だろう。
何か、引っ掛かる気がする。
「キールがそれに気付いて、危険を承知で私達に教えてくれたのよ。まあ、バーボンにも言わない訳にはいかなかったから伝えたけれど」
この引っ掛かりは何なのか。
でも正直な所・・・この引っ掛かりはずっと前から感じていた気もして。
「それ・・・零に伝えたのはいつですか?」
「貴女が鍵の一部だったことは貴方達が動き出す少し前だけど、データが組織の手に渡ったことは2日前には伝えていたわ」
2日前・・・そう聞いて少し引っ掛かりは取れた気もしたが、それでもまだモヤモヤと何かが残った。
「そういえば、スマホにお兄さんから暗号が残されたって聞いたけど・・・」
「あ、はい。一応、赤井さんには転送しました・・・けど・・・」
ジョディさんに言われ、握っていたスマホを徐ろに見た瞬間だった。
背筋が少しだけ凍ったのは。
「・・・どうしたの?」
「い、いえ・・・」
・・・このスマホを、私は少し改造している。
それは少し前から、自分でも気をつけなければいけないと思ったから。
私なりの方法ではあったが、それが本当に機能する日が来るとは。