第105章 意図的
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「あれ・・・キャメルさん?」
「お久しぶりです」
あれから数分車を走らせた、人気の少ない場所で私とジョディさんは車から降ろされた。
あとは作戦通りに、と。
そして、その後すぐに到着した車を運転していたのが、キャメル捜査官だった。
「日が沈むまで、でしたよね?」
ジョディさんと2人素早く車に乗り込むと、同時に車は発車され、その最中キャメル捜査官はそう確認の言葉を挟んだ。
「ええ。それまでは何としても、彼女を組織の目から遠ざけるのよ」
・・・赤井さんの車を降りる直前、公安やFBIが掴んでいる情報は、組織も大方掴んでいると聞かされた。
今まで組織が私を気にしていたのは、ずっと前からこの可能性を感じ取っていたのだろうか。
「ただ、決めた時間には・・・」
「分かってます」
ジョディさんが念を押すと、キャメルさんは食い気味に返事をしながら、どこかへと車を進めた。
・・・恐らく、順調に事は進んでいる。
それでもやっぱり気になるのは。
「あの・・・透さんは大丈夫なんでしょうか」
彼はきっと今も、公安として動いているはずだ。
赤井さんから聞いた話では組織も私を探しているみたいだが、だとすればバーボンへ1番に連絡が入るはずだ。
もし私が一緒にいないと・・・それが逃がしたとでも思われたら。
その上、公安だとバレたら。
「・・・もう彼は、隠すつもりはないんじゃないかしら」
・・・そう、か。
「我々FBIは、全面攻撃を仕掛ける予定よ。彼らが黙っていると思う?」
確かにそうだ。
赤井さんが動いている時点で、彼はジッとしていないだろうな。
せめて赤井さんと零との、誤解のようなものは解いておきたかったけれど。
赤井さんがそれを望まないのなら、仕方がない。
「まあ、彼がこちらの想像以上に、冷静さを失わないことを祈るわ」
それは、私も心配している。
赤井さんとの取引を完了させた瞬間、彼が自暴自棄にでもならなければ良いけれど。