第105章 意図的
「・・・それは我々が聞きたい所だな」
ここまで分かっていて、それが分からないのか。
それとも、それは私に言いたくないような理由なのか。
今更になってこの事実が浮き彫りになった理由も知りたい所だが、今はそんな余裕も無いようで。
「赤井さん・・・動き出したみたいだよ」
突然、今まで黙っていたコナンくんが赤井さんへと、そう声を掛けた。
「だろうな」
後部座席からコナンくんの方を覗き込むように見れば、彼は何やら掛けているメガネに手をやっていて。
そのレンズに映る何かに目を奪われると、意識は瞬時にそちらへ向いてしまった。
「な、何を見てるの・・・?」
「発信機の位置だよ。僕が仕掛けておいた」
そうサラリと言ってみせたが、彼からの返事には聞きたいことしかなくて。
それは誰の、どこに、いつ仕掛けたのか。
相変わらず便利な道具を持っているなと、心の中で博士を賞賛しつつも、そんな疑問が頭を駆け巡った。
「悪いけど、風見さんに付けさせてもらったんだ」
「・・・コナンくん」
以前彼に忠告したはずなのに。
そう呆れのような感情を乗せながら彼の名前を呟けば、今回は仕方がないとでも言うように、彼はヘラっと笑ってみせて。
「安室さんは隙がないから」
それでは遠回しに風見さんを軽く見ているようにも聞こえるが・・・。
確かに零に仕掛けることは難しいだろうな。
どっちみち、今回は見逃す他ない。
「・・・風見さんが動いたってことは、公安が動いたってこと?」
「そうだね。多分、安室さんも一緒だ」
公安が動いたからといって、それが何なのかは分からないけど。
どっちみち、私と赤井さんの取引を完了させるには公安の人達から離れなければならない。
「この先で一度、別行動にする。ジョディは、彼女を例の場所に連れて行ってくれ」
「分かったわ」
・・・確かに、このまま赤井さんの車で移動していれば、見つかるのはすぐだ。
でも、例の場所とは。