第105章 意図的
「FBIが何の用だ・・・っ」
零は車から出ると、運転席の側に立ったまま赤井さんにそう言い放って。
・・・きっと用があるのは零じゃない。
それは分かっていたのに声は出ず、体も動かなくて。
「彼女を安全な場所に移さねばならないのだろう?なら、こちらが引き取ろう」
「そんな事を頼んだ覚えは無い!」
表面上の交渉をする赤井さんを静かに窓越しに見つめていると、一瞬彼と目が合って。
その瞬間、またスマホが振動して。
「・・・・・・っ」
こっそりとそれを確認すると、今度は〇印一文字のメールがあった。
これは・・・合流の合図だ。
「君の仲間は、上で誰かと揉めていたようだが?」
零と会話をしながら私にメールを送ってくる赤井さんを鋭い目付きで見てみるが、彼からは何も返って来なくて。
そして赤井さんのその言葉に、零は再び風見さんへと連絡を取っているようだった。
「・・・チッ、他に車は無いのか!?」
突然そう叫んだ彼に、思わず視線を向けて。
まさか、風見さんの車も潰されたのか。
・・・いや、彼らが潰したのか。
「急いだ方が良いのだろう?このままでは奴らに彼女を奪われるぞ」
「それなら僕も、同行させてもらう」
そう赤井さんに言い放った彼だったけど。
それは・・・。
「残念だが、定員オーバーだ。これからもう1人、助手席には人を乗せるつもりでね。後ろには彼女と・・・」
煙草に火をつけながら、赤井さんの乗る車の後ろのウィンドウが開いて。
「私がいるわ」
そこから乗り出すように顔を出したのは、ジョディさんだった。
「悪いけど、こっちもこっちで急いでるの。貴方と喧嘩してる暇なんて無いのよ」
顔を出すなりそう話す彼女に、零は更に険しい表情になっていって。
「・・・FBIには、もう任せておけない」
最近は協力的だった彼らだが、やはり根本は改善されていないようだ。
やはりこの進まない状況を進めるには私が動くしかないと、重たい体をゆっくりと動かし始めた。