第15章 謎特急
「声を出すなよ」
どういうことだろう。
そう考える暇もないまま、少しだけ扉が開かれて。
「ベルモットか?悪いが彼女は僕が連れて・・・」
一瞬、ドアの隙間から廊下にいる透さんが視界に入った。
それはこちらに拳銃を構えている姿で。
ああ、やっぱり。
透さんの胸板を押した時に感じたあの硬いもの。
それは想像していた通り拳銃だった。
そう思っているのも束の間、男は透さんに向かって何かを投げた。
それはカラカラと音を立てながら床を転がっていって。
「・・・手榴弾!?だ、誰だ!誰だお前!」
動揺する透さんの声。
それを無視してゆっくり扉を閉める寸前に、男の顔を見上げた。
薄らと廊下からの明かりで顔が見えた。
鋭い目付きの男・・・その目はしっかりと透さんを捕らえていて。
その表情は少し笑みを含んでいるようにも見えた。
いや、そんなことより。
手榴弾・・・さっき透さんは確かに・・・
透さんの言葉を思い出している瞬間、突然大きな爆発音を上げて車体が揺れた。
「・・・・・・!!」
口を塞ぐ男がしっかり私を支えてくれたおかげで少しよろけただけで済んだ。
「くそ・・・っ」
扉越しに透さんの声が微かに聞こえ、無事だったことを確認する。
それに少なからず安心した自分がいて。
「後はこっちに任せろ。悪いようにはしない」
安堵も束の間、突然男は小声でそう言った。
なんの事かとチラリと視線を向ける。
一瞬で嫌な予感がして、その予想は虚しくも当たってしまう。
口を塞ぐ手を離されたと思ったら、今度は薬品の匂いがする布を押し付けられて。
「・・・っんぅ!」
必死でその手を離そうとするが、みるみる内に瞼は重たくなっていく。
ダメだ、ここで意識を手放しちゃ・・・
そう頭では思っていても、力はどんどんと抜けていく。
透、さん・・・
頭の中で彼の名前を呼びながら、ものの数秒で意識を手放した。