第105章 意図的
「君のお兄さんについてだ」
「・・・?」
兄・・・?
今更兄について、何の話だろうか。
思い当たる節は特にないが。
ーーー
零のセーフハウスへと戻ってくると、彼は夕飯の準備を始めた。
手伝うと何度も言ったが、何故か今日は断られて。
渋々隣の部屋のベッドにもたれ掛かりながら座ると、彼は満足そうに笑みを浮かべキッチンへと戻って行った。
・・・ただ、これは少し都合が良いかもしれない。
スマホを確認するタイミングができた。
キッチンの方から音がすることを確認しつつ、バッグからスマホを取り出すと、パッと画面を開いてみて。
そこにあった番号は予想を外し、コナンくんでも赤井さんでも沖矢さんでも無いものが表示されていた。
「・・・?」
ジョディさんだ。
念の為番号は登録していないが、間違いなくそれは彼女のものだった。
赤井さんからではなく、ジョディさんからということは、FBIに何らかの動きがあったということだろうか。
それとも、全く別のことか。
気にはなったが、今電話を掛ける訳にもメールをする訳にもいかない。
ここは完全に零のテリトリーだ。
何があるか分からない。
仕方なく着信履歴を削除すると、今は気にしないようにしてスマホをバッグへとしまい込んだ。
モヤモヤと考えを巡らせていると、数十分後に隣にいる彼から声を掛けられて。
夕飯の準備が整ったことを告げられると、いそいそとダイニングテーブルの方へと向かった。
相変わらずこの短時間で作ったとは思えない料理たちに目を奪われる中、それらが乗っているお皿が今日買ったものだということに気がついて。
「やはり、揃えられているのはいいな」
・・・確かに、バラバラだった頃より見栄えは数段よくなったかもしれない。
でも何故か心がチクチクと痛む。
「ひなた」
彼に椅子を引かれると、座ってくれと目で合図をされて。
小さな戸惑いや羞恥がありながらも、黙ってそれに従った。