第105章 意図的
「やっぱり一緒に写真、撮りたかったかも」
「それだけはできないんだ、すまないな」
辺りは日が落ちて。
帰りの車内、僅かに口を尖らせながらボヤくように言えば、彼は申し訳無さそうに笑いながらそう言って。
それは勿論、私は重々承知している。
「分かってる。でも、ちょっと勿体なかったなって」
無闇に彼が私生活の写真を残す訳にはいかない。
でも、あれをもう一生見ることはできないのだと思うと、少し悔しさのようなものがあって。
それに。
「私の写真は撮ったのに・・・」
抜け目無く、彼のスマホには私のドレス姿が収められている。
それが少し不公平さを強めていて。
「あれを残しておくなという方が難しいだろう?」
そんな事を言えば、彼のタキシード姿だってそうだ。
話が堂々巡りになってしまうので、敢えて口にはしないが。
「・・・!」
あと少しで家に着こうかという頃、カバンから僅かに光が漏れた。
これはきっと、誰かからの着信。
それがFBIからだと都合が悪いから。
零と二人でいる時は、バイブ音も鳴らないようにしている。
この僅かに漏れる光も、かろうじて私にしか見えてはいないと思うが。
バレないだろうかという緊張感が、静かに私の中で高まった。
「・・・ひなた」
「な、何?」
ダメだな。
私はつくづく隠し事ができない。
すぐ動揺してしまう。
「今日は振り回して悪かった」
「そ、そんな事ないよ。久しぶりに零と二人で出掛けられて、楽しかった」
カバンの中で明かりが消えた事を確認すると、少しだけ胸を撫で下ろして。
このスマホに電話が掛かってくるということは、赤井さんかコナンくんだとは思うけど。
だとすれば、その電話の内容が気になる所で。
「それと・・・帰ったら一つ話がある」
「・・・話?」
そしてもう一つ。
気になる種が今この時増えてしまった。