第104章 終って※
「ど、どしたの・・・」
こんな場所に誰かが来るはずはないけれど。
それでも外だという事に若干の緊張感を感じながら、やはり少し前から様子のおかしい彼に戸惑う他無くて。
「僕の中にも、ひなたを沢山残しておきたい」
質問の答えにはなっていない返答に、脳内には更に疑問符が増えて。
離れている期間に、何かがあったのだろうか。
・・・いや、私の言葉一つ一つで、彼をおかしくさせている気もする。
「思い出の場所は、多い方が良いと思わないか?」
・・・それは、そうだけど。
ただ単純に、その思い出の場所を増やしたかっただけなのか。
でもその場所にここを選んだのは少し疑問で。
彼は、私を見ているようだったが、その奥に別の誰かを重ねているようにも見えた。
亡くした友人の写真を見つめる、その眼差しが・・・見えるようで。
「・・・ひなたに一つ確認しておきたいことがある」
腕枕にしていた彼の腕がそっと引き抜かれると、私の顔の傍にそれぞれ手をついて見下ろされた。
逃げ場の無い状況にもそうだが、彼の言葉に身構えるように、更に緊張感が体を包んで。
冷や汗がスっと流れた瞬間、彼の口がゆっくりと動いた。
「僕に隠していることは無いか?」
「!」
・・・ああ。
動揺してしまった。
一番感情を出してはいけない質問なのに。
これがブラフだとすれば、FBIにも迷惑が掛かる可能性が出てくるのに。
「何も・・・」
過ぎらせてはいけない。
彼に感情も、何も読み取らせてはいけない。
とにかく今は、しらを切るしかない。
「もう一つ聞く。ひなたが何も残そうとしないのは、無意識か?」
・・・成程。
「最近のひなたは、僕を残さないようにしているように見えるんだが」
探偵というのは本当に厄介だ。
その上、彼は警察官で。
こちらが無意識に起こした行動から、色々と察してしまうのだから。