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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第104章 終って※




彼に手を引かれ進んだのは、道と言えるのかは少し怪しい場所で。

木々が生い茂る中、けもの道のような場所を連れて行かれるがまま歩いた。

神秘的、といえば聞こえは良いように感じるが、捉えようによっては何か出てきそうではある。

熊のような目に見えるものであっても怖いが、そうでない心霊的な場合も十分に有り得そうな所だった。

「れ、零・・・」
「どうした?」

手は握ったまま。
握っていない片方の手で彼の袖を掴むと、そっと身を寄せて歩いた。

・・・怖いとは口に出しては言えなかった。

それはこの歳でということもあるが、何より彼が秘密の場所だと言って連れて来てくれた場所だから。

「・・・僕も、昔は少し怖かった」
「昔?」

言えない私を見越してか、彼はフォローのようにそう言ってくれて。

昔という事は、かなり前から知っている場所なのだろうか。

「一人だったら、見付けられなかった場所だ」

そう話してくれる彼の横顔を見て、誰とこの場所を見つけたのか、何となく察しがついた。

この優しい穏やかな表情。
家を出る時にも見た、あの表情だ。

つまりこの先の場所は・・・大事な友人と見つけた、大切な場所という事なのか。

「そろそろだ」

彼が言っていた通り数分歩いていると、視線の先で開けている場所を確認して。

そこを通り抜けると、開けた原っぱが広がっていた。

何も無いただの原っぱ。
ただ一つだけ目につくのは、大きな一本の木だった。

「ここ?」
「ああ。昔ここでよく遊んだんだ」

懐かしむように目を細める彼を見て、少し羨ましくも思えた。

私には懐かしむような場所が無かったから。

「おいで」

再び彼は私の手を引くと、今度は勢いよく走り出して。

脱げそうになったキャップを慌てて手で抑えながら、何とか必死に彼について走ると、その足は大きな木の前で止められた。

「・・・よくこれに登った」

そう言いながら、その木に触れる零の表情が優しくて。

そよ風が彼の髪を揺らす姿を見て、何故か心臓が大きく跳ねた。




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