第104章 終って※
「何、見てたの?」
せめて、あの視線の理由くらいは知っていたい。
そう思い、彼に尋ねながらゆっくりと近付いていって。
「・・・写真さ」
「写真?」
そんな事か、とでも言いたげに、零は閉じかけたパソコンを開き直した。
何の写真なのかと首を傾げながらそれを覗き込むと、そこには以前彼から見せてもらった、友人達が映つる写真が画面に表示されていた。
「・・・アイツらに会いたくなったら、こうして見るんだ」
そう話す彼の表情は穏やかだったが、きっと内心はそれ程穏やかでも無いのだろうな。
「・・・・・・」
会いたくなったら。
その言葉が、妙に頭の中を回る。
何故、今。
零はこの画面越しの彼らに・・・会いたくなったのだろう。
そればかりが、気になって。
「さて、ひなたの準備ができたようだから、出掛けるとしよう」
ゆっくりと腰を上げながらパソコンを閉じると、途端に彼の心にも蓋をされた様だった。
深い意味はないのかもしれない。
けど、今まで私の前でこういう姿を殆ど見せた事が無かったから。
弱さをあまり見せようとしない彼に、どこか虚しさだけが残ったまま、二人で部屋を後にした時だった。
「ひなた」
先に靴を履いていると、突然背後から名前を呼ばれて。
疑問符を浮かべながらゆっくりと振り向いたと思ったのに。
気付けば背中はドアへついていて。
顔のすぐ横には彼の手と腕も壁につき、追いやられるような体勢になっていた。
「ひなた」
「ど、どうした、の・・・」
もう一度、改まったように名前を呼んで。
どうにも、さっきから彼の様子がおかしいように感じた。
「口、開けて」
壁についていた片方の手が、私の頬に添えられて。
ああ、キスされる。
・・・でも、どうして。
「・・・・・・」
どうして・・・?
別にどうしても何もないだろう。
何故そんなことを思ってしまったのか。
ただのキスだ。
それだけだ。