第104章 終って※
「ひなた」
・・・呼ばれている。
起きなければ。
頭ではそう思っているのに、体は言うことを聞かなくて。
「・・・んっ」
温かい何かを失った体は、少しでも温もりを求めるように体を丸めて。
そうしていると、耳元に何か柔らかい感触を受けた。
「今度はキスで目覚められるか?」
これは確認だろうか。
それとも質問なのか。
いや、今は何でもいい。
とにかく眠りたい。
そんな欲望の中で意識を薄れさせていると、顔にそって冷たい何かが触れた。
それが私の唇をなぞると、ほんの少しだけ眠気を飛ばされたような気がして。
「ひなた」
・・・ああ、零か。
体が覚えていたその冷たさに気付くと、薄ら瞼が開いて。
そこから見えた彼の表情はいつもの様に優しく、安心感を強く感じるものだった。
「・・・!」
・・・零だ。
気付いていた事実を現状として飲み込むと、半端にあった眠気は一瞬で吹き飛んだ。
慌てて体をガバッと起こすと、目の前にいた彼はクスっと笑いを漏らして。
「おはよう」
起きたようだな、と改めて指先で頬を撫でられると、一気に顔が熱くなる感覚を覚えた。
「ごめん・・・」
さっきベッドで寝惚けて触れたのは彼だ。
聞いていたのは心音で、彼の素肌に耳までつけて。
恥ずかしい事この上ない。
「何に謝る必要がある?」
そう言いながら彼はベッドに腰を下ろすと、頬を撫でていた手を私の頭の上に置いて。
「僕の方が謝らなければならない。無理をさせて、すまなかった」
そういえば昨日はとても長い夜を過ごした気がする。
でもそれも、今となっては一瞬の出来事で。
最後は気を失うように意識を手放したが、いつもの様にきちんと部屋着を着せられている事に気付いた。
でも彼は相変わらず上に服を纏わないのだなと視線を向けた時。
「・・・・・・!」
そこはさっきまで私の耳が触れていたであろう場所。
彼の心臓辺りに。
赤い痕を見つけた。