第15章 謎特急
『何かあったんですか?』
分かった、と了承の返事を送れば良かっただけなのだが。もっと確証が欲しくて、透さんにそうメールを送った。
暫くして、メールの着信を告げるバイブ音。急いでメールを開くと。
『気にしないでください。とにかく、先程の指示に従ってください。』
やはりガードは固い。
もっと確実な証拠が欲しい。
例えば、本人の口から組織の人間かどうかという証言・・・とか。
そんなことはありえないのだけど、と自分を嘲笑った。
どうしても、了解の返信が出来ずにメールはそのまま放置した。
透さんの指示に従いたい。
でも今は沖矢さんの指示に従っている。
私は結局どちらの味方なんだろう。
あくまでも透さんだけは信じていると、何度も何度も目を瞑って自分に言い聞かせた。
暫く何もできず、ボーッと外を眺めた。
流れる景色が走馬灯のように駆け抜けていって。
そんな時、突然部屋の扉が開いた。一瞬で意識を取り戻し、扉に目をやった。
「ふふ、楽しい列車の旅とはいってなさそうね」
顔を覗かせながら入ってきたのは有希子さんだった。そうと分かると、自然と体から力が抜けて。
有希子さんはゆっくり向かい側に腰を掛けると、私をじっと見つめた。
「ひなたさんは口が硬いと信じて少しだけ話してあげる」
有希子さんに笑顔を向けられながら、突然そう言われて。何を言われるのか身構えると、自然に心臓の鼓動が早くなった。
「この列車、組織の人間が乗ってくるかもしれないって事だったんだけど、どうやらその読みは当たったようよ」
その言葉を聞いた瞬間、過ぎったのは透さんの顔。
どうして彼の顔が真っ先に浮かんでしまったか。
浮かべるなら、あの日ポルシェに乗り込んだあの二人組じゃないのか、と自分に叱咤する。
いや、その前に。
「・・・有希子さんはどうしてこの列車に?」
彼女はコナンくんの親戚のはず。なんのメリットがあって彼らに協力しているのだろう。
「私は、新ちゃん・・・息子がちょっと関わっちゃってるからその手助けに、ね」
ウィンク混じりにそう返された。
なるほど・・・彼も有名な探偵だ。一般庶民の私が巻き込まれているのだから、彼なら首を突っ込んでいてもおかしくないか、とどこか納得した。