第104章 終って※
「・・・っ、ん・・・」
さっきまでとは違う、ゆったりとしたキス。
絡まってくる舌が私の舌へと重なり合うと、ゆっくり絡み合って過ぎていく。
その感触に全身がゾクゾクと震えてくるようで。
「は・・・っあ、ンぅ・・・」
息が苦しくなると少し顎を引いて唇を離してみるが、一息吸ったかと思うとまたすぐに塞がれる。
そんな事を繰り返しながら長い長いキスを数分続けた。
「ンんっ、ん・・・」
相変わらず、キスの最中に上手く呼吸ができない。
こればかりはいつまで経っても上手くなる気がしない。
鼻から空気を取り込むだけ。
たったそれだけの事ができなくて。
「・・・ひなた」
「な、なに・・・?」
唇が離され、呼吸が落ち着きを見せ始めた頃、彼はほんの少しだけ改まったような様子で名前を呼んだ。
それにどこか身構えるような感覚で、顎を引いては上目で彼を見ると同時に首を傾げて。
「え、わ・・・零・・・っ!?」
その直後、突然体に腕を巻き付けられたかと思うと、彼はそのまま私を持ち上げてみせた。
膝の上に乗るような形で向き合ったままそこに座らされては、視線を真っ直ぐ私に向けてきて。
その目力の強さのせいか、距離は変わらないはずなのにさっきよりも彼の顔が近くにあるように感じた。
「ど、どうしたの・・・」
眠気覚ましの為だろうか。
それなら効果はしっかりとあったけれど。
「ゆっくりという希望だったな?」
「え・・・?」
どうやらそうでは無いようで。
腰に手を添えながら、彼は少し楽しそうにそう問いかけてきた。
その質問の意味はすぐに分かった、けど。
「さっきは希望通りできなくて、悪かった」
・・・それについては、否定できない。
私が思うゆっくりとは僅かにズレが生じていたから。
「だから今度は」
ああ、だから今度はゆっくりするのか。
「ひなたが動いてくれないか」
・・・なんて考えは、流石に甘かったか。