第15章 謎特急
その後、無言のまま沖矢さんに部屋まで連れて行ってもらい、二人で入室する。そこに有希子さんの姿は無かった。
沖矢さんは荷物の中から盗聴発見器を取り出し、私をとことん調べた。しかしそれは反応を示さなくて。
「もう喋っても良いですよ」
その言葉に大きく安堵のため息が出た。少なからず、今の私にとってここは落ち着ける場所であって。
「あの・・・すみませんでした・・・」
「どうして謝るんです?」
「いえ・・・色々と・・・」
謝らなければならないと思う事が多過ぎて一々言ってられなかった。一部口にし難いことがあるのも事実だが。
「彼は随分と貴女を気に入っているようですね」
そう言う沖矢さんはどこか楽しそうで。
「・・・そうだと良いんですが」
それに対抗するように言い返した。
一瞬でもこの人を頼りにしてしまったさっきの自分に今度は呪いをかけておきたい。
「ところで、先程ひなたさんが送ってきたメールですが、推理クイズというのは?」
「え・・・ご存知ないんですか・・・?」
このミステリートレインに乗るのだから、それくらいは知っていると思ったが。と、不思議に思いながら答えると。
「いえ、推理クイズがあることは知っていますが、まだ始まっていないそうですよ」
それを聞いて耳を疑った。では、さっきまで私たちが協力していた推理クイズとは一体・・・。
そんな時、突然車内アナウンスが流れた。
『お客様にご連絡致します。先程、車内で事故が発生しました為、当列車は予定を変更し最寄りの駅で停車することを検討しておりますーー・・・』
「・・・どうやら、天は我々に味方しているようですね」
それを聞いて沖矢さんが不敵な笑みを浮かべた。
言葉の真意は分からなかったが、彼らの作戦にとっては良い方向に進んでいるようだ。
「・・・あの、私はこれからどうすれば・・・」
透さんが乗っていると分かり、その上、彼には私がここにいることがバレてしまっている。
沖矢さん達が、何をしようとしているのかは知らないが、透さんが組織の人間なのかどうなのか、私にはそれだけ分かれば良い。