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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第103章 これで※




「帰ったらきちんと受け止める。だから今は、大人しくしていてくれ」

・・・ズルい。
まるで私が、駄々を捏ねているような言い方。

ある意味、間違ってはいないけど。

涙を拭う冷たい手も、少し癖のある髪も、真っ直ぐ私を見つめる瞳も。

全部、全部、ズルい。

ーーー

「ひなた」

酔いはまだ覚めないまま、彼のセーフハウスへと戻ってきて。

ベッドに座らされると、彼から水の入ったコップを差し出された。

「・・・・・・」

普段なら、お礼を言って素直に受け取っている。
でも今はそんな風にはなれなくて。

ふいっと顔を逸らすと、膝を抱えて体を丸めた。

一度高めてしまった感情は、中々落ち着いてはくれなくて。

唇を噛んでは顔を顰めると、可愛げの無い自分に嫌気がさした。

「・・・ひなた」

ベッドが、ギッ・・・と音を立てて沈んだ。

彼がそこへ膝を付いたのだということは、見なくても感覚で感じて。

「・・・んッ、ぅ・・・」

意地でも向いてやるものかと目を瞑った瞬間、彼の手が頬を滑ると、顎を掴まれて。
そのまま無理矢理彼の方を向かされては、勢いよく唇を塞がれた。

そこから冷たい液体が流れ込んでくるのを感じると、体は自然とそれを拒んで。

それでも唇が離れないせいで行き場を失い、重力に負けた水は私の方へと流れてくる。

唇と唇の隙間から、僅かに漏れたそれが首筋に流れたが、大半は私の胃の中へと収まった。

「飲まないなら、飲ませるが」

どうする、と水の入ったコップを目の前で再度チラつかされて。

飲むのも、飲まされるのも嫌だ。
喉なんて乾いていない。
そこまで酔ってもいない。

私は、いつも通りだ。

言い聞かせるように、心の中で何度もそう繰り返した。

「ひなた」

子どもに言い聞かせるような声色に、どこか気持ちを逆撫でされるようで。

顎を掴んでいた彼の手を突き放すように退けると、素早く布団の中へと潜り込んだ。

「・・・ひなた」

呼ばないで。

「すまなかった」

どうして謝るの。

「・・・すまなかった」

謝らないでよ。

聞きたいのは、そんな言葉じゃない。




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